ぺるのこと about 'Pel'

ぺるが死んでから、今日で一年だ。

 

ぺるはわたしが小学4年ころ、雪のふった日、国道19号線の家の前をとことこ歩いていた。危ないよちょっと待ちなよ、と家に招き入れた。地元紙に「迷い犬預かり中」など記事をのせて、しばらくもとの飼い主を探したけれど。みつからず気づいたらうちの犬になっていた。

ひとなつこい犬で「お手」も「待て」も知ってて。知らない人でも「わたしを撫でてん」すぐこてんと寝転がり、おなか見せてしまうくらい。一方で野良時代の天性か、食い物には執着心が強く、拾い食い癖はなおらなかった。

 

白くて耳と背中はこんがりきつね色。トースターでちょうどいい焼き具合は「ぺる色」。いつも自分でぺろぺろなめて、ぴかぴか汚れのない美しい毛並みだった。

あんなに食いしん坊なのに、スリムでしなやかな筋肉。くふん、と人を小馬鹿にしたように、笑う。

 

いい犬だった。

 

14年目を迎えた冬は、いくぶん目が濁って来たり、走らなくなったところに老いを感じたが、いつもと変わらず子羊、雪の中ではオコジョのような出で立ちだった。

卒業式直前、最後の春休み。彼女の老化は音を立てて進んでいた。立てない、あるけない。夜鳴きをする。やせて、きれいな毛並みにつやはなかった。家族で彼女の「老い」を、ただひたすら見守った。

 

春の訪れがやっと松本にもきて、桜が咲き始めた2010年の4月17日。ぺるは静かに息をひきとった。母親からの逐次メールでそろそろだと心の準備はしていたが、報告をきいて涙がとまらなくなった。まよわずバスに飛び乗った。

 

眠っているようなぺるは冷たく、でも耳はいつものようにぴんとしていて、つまんでひっぱっては、元気だったころのぺるを思い出した。

赤い首輪と散歩紐で赤いグラウンドのある芝生にいつもお散歩に行く。ここで友だちと思い切り、走って遊んだ。わたしも、ぺるといっしょにいたおかげで老若男女犬猫たくさん友だちができた。

ふたりだけで、芝生に寝転がるのもすきだった。上京してからは、たまにになってしまったけど。帰れば必ず一緒に散歩にいった。

 

地元の桜をみるのは6年ぶり。4月なんて一番忙しくて、上京してからは帰ったことがない。小学一年生のときにおばあちゃんが植えてくれた「わたしの桜」ずっと苗みたいにひょろひょろだと思っていたけど、立派な樹になってて、花を咲かしていた。嬉しかった。

 

ぺるが帰っておいでと、ふるさとの桜をみせてくれた。

 

あれから1年。ぺる、天国でさきにいった友だちとあそんでますか。おいしいごはんたべてますか。わたしは元気だよ。

 

今年も、ふるさと信州は桜が満開みたいです。

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